【第10回】SoundCloudのスゴいところを考えてみた


今回のテーマ:SoundCloudのスゴいところを考えてみた

例えば、今週新作のアルバムを発表したBrian Enoは、SoundCloudにその収録曲を公開しています。なぜ、多くのアーティストは新作を発表する前に、楽曲を無料で公開し始めているのでしょうか。

Brian Eno - glitch (taken from Drums Between The Bells) by Warp Records
Drums Between the Bells (Bonus Track Version) - Brian Eno

▶公開する事の良い点、悪い点

このように、アーティストがSoundCloudのような媒体に楽曲を公開する事には、 相反する機会とリスクが考えられます。具体的には、以下のような点です。
  1. そこで試聴する事で気が済んでしまい、購買につながらない。(リスク)*1
  2. 気に入ったので、購入してオフラインでも聴きたい。(機会)
ここに三つ目の視点が加わることで、SoundCloudの「機会」は、そのリスクをしのぐ大きな魅力を持ちます。それが、以下に述べるような「注目度が可視化され、伝播していく」という特徴です。



▶SoundCloudのオイシイところ

SoundCloudはその他サービス(twitterFacebook)に埋め込みやすく、アカウントオーナー自身がシェアせずとも、ファンがシェアすることで、認知度が伝播していくことがあります。

アーティストによっては(Brian Enoもそうですが)自らのウェブサイトに楽曲を埋め込む際にSoundCloudを利用している例が多くみられます。(また、ダウンロード可能な場合も多い)


ただ、他にも音楽をアップロードし、ストリーミングで再生可能にするサービスは 多く存在します。そのなかでもなぜSoundCloudが選ばれているかについて、「注目度の可視性の高さ」という点が効果を挙げていると考えます。



▶「注目度」は気になるもの

人が他人の注目するものの影響を受けやすいことは、ネットワーク理論において明らかにされています。*2 つまり、既に注目を集めているものは、波及し、更なる注目を集める可能性を秘めているのです。

しかし、只単に、他人が注目をしているからといって、自分も同じモノの興味を持つとは限りません。そこに「他人が注目しているとを知る為のきっかけ」が必要になります。 それが、可視性の問題です。




▶伝わるかどうか(可視性)

身の回りで何が人気か。つまり —「他の人が何に注目しているのか」— この事は様々な点から確認ができます。


会社や学校で顔を合わせる人なら、身につけているものや、会話からその情報は得ることができるでしょう。また、顔を合わせなくとも、好きなタレントやスポーツ選手の身につけているものはテレビやブログで確認することができます。


日頃から接する多くの人が同じモノに凝っている事に気づいた時(例えばキャラクターのキ―ホルダー)、そこに「みんなはこれに興味があるんだ」という気づきが生まれるわけです。


SoundCloudには、コメント欄という、一つの人気の指標があります。これは、ページにSoundCloudの楽曲を埋め込む時にも表示することができ、直感的にその楽曲の話題性や聞き所が分かります。最初に挙げたBrian Enoの楽曲へのリンクがよい例です。


また、その「サイズ」も好影響を及ぼしていると考えられます。ページ内に必要以上にスペースをとるコンテンツはユーザーの認知上、 あまり好ましくなく。その点、埋め込まれるSoundCloudプレーヤーは、邪魔にならない程度の大きさであり、コンパクトであるにも関わらず、他の人たちがコメントしている量と内容を簡単に確認することができます。


このように、注目度がコメント機能により効果的に可視化され、
コンパクトなプレーヤーの埋め込み機能で効果的に伝播していくのが
SoundCloudの強みであり、特徴と言えるでしょう。


*1この点に関しては、これまでにも様々な議論がなされ、 必ずしも無料公開と購買訴求は相互排他的ではないという調査結果もでています。
例えば: クリス・アンダーソン著『フリー』、邦訳発売前に無料で全文公開 by wiredvision.jp

*2経済学者ガルブレイスや、Connected (Nicholas A. Christakis)
に詳しい




revised_2012/12/09

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